(1)引きこもり家族会の組織戦略の検討 昨年度に引き続き、組織戦略の検討を進めた。引きこもり支援の領域は、ニートやフリーターのように就労支援の対象となる層と、精神障害などのハンディキャップをもった層に対する支援の中間に位置することが明瞭になった。それゆえ、「すぐに働くことができないが、明確なハンディキャップのカテゴリーにも属さない」という状態の当事者に対する支援が必要となる。それゆえ、従来の医療モデルに追随する方法や、引きこもり支援という新たな領域を開拓する手法などが模索される。関東・関西を含むNPOのヒアリングからは、大きく分けると、支援カテゴリーの細分化と曖昧化という、相反する戦略がうかがわれた。 (2)引きこもり支援手法の検討 東海地方で発生した支援施設における死亡事件(平成18年4月)などをきっかけに、引きこもりの支援手法が問われている。本研究では、事件に関連して、公判の傍聴、事件報道の検討、シンポジウムの開催などを行った。その結果、危険な手法が正当化される背景として、家庭内暴力や精神疾患の問題における、医療や行政による支援の「空白地帯」の存在が認められた。それゆえ、NPOによる支援の功罪の検証、家族への情報開示を進める必要がある。 (3)質問紙調査への検討 九州地方の研究者(臨床心理学)らと共同で、引きこもり家族会の全国組織を対象とする質問紙調査を実施した。結果については現在分析中であるが、社会学の観点からは、地域ごとの支援体制の多様性が、家族会への参加期間などに関する質問項目から明らかになることが期待される。
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