研究概要 |
本研究は,普通教育においてデザインがもつ教育的意義を検討したうえで,児童生徒の発達に即した学習プログラムを開発することが目的である。平成18年度は,以下の事項を遂行した。 1.文献資料の収集と分析の継続 関連文献の収集と分析を行った。特に,我国における明治期から高度成長期にかけての普通教育におけるデザイン教育の変遷と,その黎明期と発展を支えた専門教育機関におけるデザイン教育の変遷を考察した。この作業は,他大学の研究者と共同的に取り組んでおり,現在もなお継続中である。(今後,この領域での研究発展も予想される。) 2.現代デザイン・デザイン教育に関する文献の収集と分析 まず,現代社会に求められているデザイン概念の抽出を行った。この作業には,デザイン理論に関する文献や,日本デザイン学会誌の研究論文,デザイン雑誌記事等のデータベースを活用した。次いで,現在行われている初等デザイン教育の実態把握を行った。我国の普通教育におけるデザイン教育を推進した「造形教育センター」の研究活動や実践事例から分析を試みた。さらに,デザイン学習の授業観察を通した実態把握を行った。幼・小・中・高の教育現場における授業観察及び授業者へのインタビュー等を通して実態把握に努めた。 3.子どもの成長・発達に即したデザイン学習の目標レベルの分析と創出 これまでの研究成果,知見から,「子ども」と「社会(大人)」の視点を包括した目標概念を創出し,あわせて発達研究の知見に基づき,子どもの発達的特性をふまえた目標レベルの想定を行った。上記2点のクロスする「題材開発マトリクス」を作成した。 4.海外視察による研究成果の検討ができた。 これまでの研究成果を海外において検証するために海外視察を行った。出張先は,イタリアのローマ日本人学校,現地学校,レッジョ・エミリア市幼稚園,トリノの現地学校等である。本視察は,すでに開発しつつある学習プログラムの有効性を,海外において検証することに意味をもっていたが,それによってこれまでの研究成果により広い論拠を付与することができた。さらにイタリアにおける教育活動を視察し,現地の教育者から知見を得ることによって,新たな視点からプログラム開発を行うことができた。
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