本研究の目的は、協働での視覚情報化ツールを活用した話し合い指導方法の開発である。聴覚情報としての発話をホワイトボードやカード類で視覚情報化し、論点や意見間の関係を明確化する「視覚情報化ツール」が有効な可能性を持つ。本ツールの利点は、話し合いの話題構造や意見間の関係がリアルタイムで明示できるため、児童生徒が話し合いを把握しやすくなること。視覚情報の活用で話し合いの進め方そのものもメタレベルで即時的に検討できることにある。さらに、各発達段階における話し合い能力の究明という点からも、従来のビデオ等による振り返りでは十分に明らかにできなかった事中のメタ認知プロセスが、即時的に記述される本ツールの活用実態を分析することで解明できる。 本年度の研究は、次の2点を実施した。 1.話し合いの視覚情報化についての調査を行った。大学生、中学生を対象に話し合いが聞き手にどのように認識され記述されるのかを調べた。大学生についての分析の一部は、長田(2006)で発表した。 2.大学生4人を対象とした本ツールを活用した場合の話し合いの調査を前年度に引き続き行った。ただし、本年度は、参加者がパソコンソフトを活用し、話し合いを即時的に記録させることを試みた。事中の視覚情報化ツールを活用した資料の収集と分析を実施した。
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