研究概要 |
本研究では、特に事中指導の段階において、なんらかの形で話し合いを視覚情報化させる手段を「視覚情報化ツール」と呼び,国語科での指導方法の開発を行った。本年は,ツールの活用に関する理論的基盤の検討を主に文献研究によって行った。研究費は,そのための文献購入,学会発表旅費として使用された。その結果,話し合い指導は状況的認知論の枠組みから捉えることが有効であることが判明した。状況的認知論とは,人間の認知について,認知主体と環境という道具や他者との相互作用から,究明する立場である。話し合い指導の困難さを極めていた要因として,このような認知観に立っていなかった点を指摘した。その上で,話し合いを媒介する道具としての視覚情報化ツールの有効性を具体的に明らかにした(長田友紀「話し合い指導におけるコミュニケーション能力論の拡張」桑原隆編『新しい時代のリテラシー教育』東洋館出版)。さらに,学会発表(全国大学国語教育学会岡山大会)においては、視覚情報化ツール研究の一環として,話し合いCDの聞き取りメモと,その報告の分析を行った。限れられたデータではあるが,小学生、中学生、大学生という発達段階により,話し合いのメモ作成および報告書の記述における発達の段階について明らかとなった。また、メモの取り方(視覚情報化の仕方)によって、報告書の記述量が変容することが明らかとなった。ここから,内容面についてもメモの取り方によって変容することが示唆される。
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