研究概要 |
本研究の目的に対し,今年度は『学力』の捉え方やその内容について,これまでの成果をさらに精査するとともに,求められる学力をカリキュラムとして具現化するための理論枠組みの設計を行うことを目指した。本研究では学校実践で活用できる理論的な枠組みの提案を目指すことから,特定の学習内容に焦点を当て,本学附属中学校および地域の中学校での参与観察および授業設計への参画を行い,その分析に基づく理論的考察を進めることに努めた。 今年度の調査では中学校3年生の「相似」の学習に焦点を当てた。その理由として,「相似」の学習が,平面図形に関連する既習事項をベースとして大成される学習の一つであること,多くの子どもが苦手としている証明学習に関連する内容であることから,授業設計や内容配列について再考が求められ,本研究のテーマに深く関わると捉えたからである。 まず文献研究により「相似」の学習に関連する先行研究を整理・考察するとともに,教科書分析などを通して学習内容の配列,指導などについて考察を行った。また,作図ツールなどのソフトの活用や「相似」の学習で求められる知識や考え方が背景にあるパンタグラフなどの活用例を学習内容に取り込むことについての分析・考察などを中学校教員と行うことによって,授業設計や求める学力の育成に対する教員の意識を捉え,これからの授業設計やカリキュラム開発についての実践に基づく枠組み作りに取り組んだ。これらの作業を通して作図や数学的な考え方に基づく道具の活用など,子どもの「構成」活動に注目をすることの重要性,そのための配列の再考やコンピュータの導入などの学習環境の整備が求められることがこれからの学力の育成につながるものであるという知見を得た。 さらによりよい枠組み作りに向け,諸外国の動向の動向を捉えることを重要視し,韓国における理数科に関するエリート教育のためのカリキュラムについても考察を行った。
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