研究概要 |
本研究は,日本の熟練した数学教師による評価方法の特徴の解明を通して,児童・生徒の関心・意欲・態度についての評価方法を開発することであった。2005年度(初年度)は,熟練教師(Expert)の選定基準を確定し,初任者(Novice)と対比する枠組みを構成した上で,国内外の授業資料を収集した。2006年度は,徳島県下の熟練した算数・数学教師4名の授業参与分析及び面接調査を通して,その評価手法の特徴として,(1)教材理解との関連性,(2)児童・生徒の問いの顕在化,(3)可視的活動の媒介,(4)持続に向けた評価の経済性,の4点を指摘し,数学教育学会春季年会で論文発表した。続いて熟練教師が(i)関心・意欲・態度を客観的に数値化し評定する試みよりも教科内容に依存したオーセンティックな文脈での評価を重視すること,(ii)関心・意欲・態度を教材との関連から捉える傾向は生徒の緘黙等を教科間比較できない消極性にも起因しており,総合的な学習傾向の把握を求めることを指摘し,日本教育実践学会第9回研究大会で論文発表した。そして2007年度は,熟練教師による関心・意欲・態度の評価と算数・数学科の指導改善の一体化という観点から追究し,(a)関心・意欲・態度の評価規準を明確化する活動において,児童・生徒の各状態を段階的に向上させる具体的指導法を同時的に着想すること,(b)関心・意欲の評価では指導への即時的にフィードバックするが,態度の評価では長期的な指導改善に結びつける傾向にあることを日本教育実践学会第10回研究大会で論文発表した。またコンケーン大学と研究交流し,本研究の知見を問題解決における情意研究と関連させ,評価方法の恣意性や偏りを克服する上で参照できる観察枠組みを開発し,2008年2月にタイで開催された国際授業研究会において公開,活用した。同実践内容は現在国際学会誌への投稿準備が進められている。
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