本研究は、創造憧開発を目指す生活主義音楽カリキュラム編成の方法を明らかにすることを目的としている。生活主義音楽教育では、子どもの各発達段階における音楽表現欲求に即した、子ども自らの主体的な音楽活動を通して、生涯にわたって生活における音楽の楽しみを味わうことのできるカの育成が目標とされ、それを実現するための創造性の開発が目的となる。 本年度も、前年度に引き続いて、1920-1950年代アメリカにおいて出版された音楽科教育関係の理論書や教師用指導書、音楽教育者団体によって刊行された学術雑誌や委員会報告、先進的な学校における実践報告書などの収集を行い、それらを整理・分析することによって、生活主義音楽カリキュラム編成のあり方を探った。 生活主義教育において音楽学習は、学校教育の全体構造の視点からその位置づけと内容が決定される。学校教育が生活の場、生活準備の場となれぱ、音楽が豊かな生活の必須部分であると同じ意味と比率において学校教育において必須の教科となる。当時の音楽教育関係者達は、教科としての音楽の地位を確立するために、生活や人間形成との関係から音楽の意味や価値を論じ、音楽科の存立根拠を探っていた。音楽科の意義は、社会的・人格的能力形成への音楽の寄与から導き出され、創造性開発が目標とされた。音楽学習の内容は、学校教育全体の中心的な主題を学習していくなかで必要となるものが位置づけられた。その結果、音楽学習内容の中心となったのは、歌唱技術、楽典的内容などであった。 この期に構想された多様なカリキュラムの形態に基づいて、どのような授業が構成され、実践されたのか。それを探ることが、今後の課題である。
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