研究概要 |
平成17年度は,類似性に基づいた推論の理論的究明,小学校における授業観察および大学生を対象とした類推を育む実践を行った。 理論的究明として母国語教育研究における「間テクスト性」概念について英語圏の論文を収集・検討した。類似性に着目することは意味が差異の体系だという面をクローズアップすること,類推の働きが読書経験の拡張として作用すること,類推によって読むという行為の過程に注目する契機となることがわかった。これらの成果を第57回中国四国教育学会(2005年11月26日,於安田女子大学)にて発表した。また意味を決定する統辞の働き,範列の働き,語用の働きの内類推が範列の働きを担っているとわかった(九州国語教育研究集会編『国語科教育研究論叢』第4号発表)。さらに類推が学習者の読むという行為を促す教材解釈にも有効だとわかった(『大分大学教育福祉科学部研究紀要』第27巻第1号,第2号発表)。 授業観察による究明として小野恵庸教諭(西安岐小学校)の「川とノリオ」の授業を対象に授業観察を行った。授業中の教師と学習者との社会的相互作用を分析した結果,類推に基づいた発言が教師-学習者間のコミュニケーションと学習者-学習者のコミュニケーションとでは認知・承認される過程に異なりがみられることがわかった。平成18年度に,継続的に授業観察を行い,考察を深める予定である。 類推を育む実践の試みとして大学教養科目「メディアリテラシー」を活用した。映像を<読む>際にも文章を読むような行為がみられること,意味づけるということが<読む>主体と映像テクストとの関わりを生む契機となること,意味づける行為に類推が重要な役割を果たしていることが明らかになった。映像を<読む>ことと文章を読むこととの類似と差異を検討した。 本年度はいずれの場合も類推という行為が授業場面で為されるメカニズムの解明を試みた。
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