研究概要 |
平成18年度は,類似性に基づいた推論の理論的究明,小学校における授業観察および類推を活用した教材研究を行った。 理論的究明として平成17年度に引き続き、母国語教育研究における「間テクスト性」概念についての英語圏の論文を収集・検討した。教室の間テクスト性が、多くの場合教師によって差し出され、教育目標と合致した収束的な問いとして扱われることがわかった。教室の間テクスト性が教師の所有する類推となり、学習者自身で文学の意味を見出す必要性を曖昧にするという葛藤を孕んでいる。(『国語の研究』第32号) 授業観察による究明として小俣恵庸教諭(武蔵西小学校)の2年生の授業を対象に授業観察を行った。平成18年5月1日より7月31日の期間に、国語科の授業において、類推が表れる場面を記録、検討した。類推が成功するためには、学習者や教師によって、類推であることが認知され、承認される必要がある。類推は、持ち込む知見のカテゴリーを強調する行為である。したがって、成功した類推は、参加者たちの解釈を構築する役割を果たしていることがわかった。 類推を生かした授業を行うために、「お母さんの木」(大川悦生)を対象とした教材研究をおこなった。意味を決定する統辞の働き,範列の働き,語用の働きの内、類推は範列の働きを担っている。範列の働きに注目することで、他のテクストに置き換えることのできない「おかあさんの木」独自の意味を探究できることがわかった。この成果を平成18年度大分大学国語国文学会(2006年11月18日,於大分大学)にて発表した。さらに映像を<読む>ことと文章を読むこととの類似と差異を検討した。(『国語科教育』第60集)
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