本研究は基礎造形教育の核に構成を位置づけ、構成教育の理論となっている造形要素の組み合わせによる造形メソッドを、効果的に利用できる場の設定について調査・実践・考察するものである。研究の最終的な目的としては、現代社会においてパソコンが普及している現状から、従来から用いられていた絵の具・紙といったメディアだけではなく、パソコンを積極的に利用した教育環境の設定を行い、基礎造形教育としての構成教育を再考することにある。具体的な目的としては、1)制作の道具としてのパソコンの利用、2)造形メソッドを理解させるための補助教材としてのパソコンの利用、3)造形に関わる美的評価への利用の3つを考えている。現在は1)について砺究を進めている過程であり、試験的に実際の授業で利用している。今後は更に研究を発展させる為にも、造形要素のディジタルアーカイブ化が必要だと考えられる。またディジタルアーカイブは2)の目的としても必要不可欠であり、研究費の交付期間中に造形要素のディジタルアーカイブを製作し、2)については実験的に試用・検証を行い、3)の評価まで研究を進める予定である。平成18年度の研究では昨年度から行っている造形要素の組み合わせによる造形メソッドを授業で使用する為の素材となるコンテンツの収集と分類整理を引き続き行った。また、昨年度に検討を進めた造形要素の分類に基づいた明快なディジタルアーカイブの構造とインデックスに従い、ディジタルアーカイブの基本となる構造の構想を行い、ディジタルアーカイブの試作を行い、学生に対する簡単な試行を実施し、評価を試みた。 1)コンテンツの収集と分類整理-資料の収集に関して昨年度に引き続き、今まで収集を行ってきた構成作品を中心に収集し、「造形要素の組み合わせによる造形メソッド」によって示された造形要素を基準にパソコン上でディジタルデータとして保存・整理を行った。また作家の作品、学生の制作した作品などを造形要素による分類に応じて収集するとともに、自ら造形要素の組み合わせによる作品(コンテンツ)を制作し、各造形要素に対してコンテンツの過不足が無いように調整を図った。 2)ディジタルアーカイブの試作-昨年度に検討を進めた造形要素の分類に基づいたディジタルアーカイブの構造とインデックスに従い、ディジタルアーカイブの基本となる構造の構想を行い、ディジタルアーカイブの試作を行った。そして、学生による実験的運用、ユーザー評価を行った。この成果は次年度のディジタルアーカイブの製作にフィードバックさせる計画となっている。
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