本研究の目的は、ことばの教室での使用を前提とした吃音を持つ児童生徒の教育的支援プログラムの開発を試み、その意義と効果を検証することにある。本年度は、3年計画の第1年目として、(1)支援プログラム作成のための予備的検討と、(2)プログラム試案の作成を行った。(1)について、内外の吃音指導プログラムについての知見を整理するとともに、ことばの教室における吃音指導の現状と担当教員の抱えている問題点等について、現地調査などを通して情報収集や、吃音のセルフヘルプグループである言友会会員を対象に、吃音や吃音治療についての考え方についての聞き取り調査も実施した。その結果、ことばの教室の担当教員は、認知・言語・運動発達や情緒・心理面、児童の生活する場面である家庭や学校場面の環境調整等を包括的に行う必要性があることは理解しているものの、実際の指導場面においてはこれらのいずれかの指導のみに偏る傾向があること等が示唆された。(2)について、以上の予備的検討をもとに、支援プログラム試案(個別指導プログラム、集団指導プログラム)を作成した。そして、金沢大学教育学部内の教育臨床指導に来所中の個別指導4件(4名)(構音障害を併せ持つ児童の事例1件を含む)、集団指導1件(2名)について、本支援プログラム試案(言語症状面、認知・言語・運動発達面、情緒・心理面、周囲の環境要因等を包括した支援プログラム)を用いた教育臨床相談を予備的に実施し、問題点や考慮すべき点についての検討を加えた。その結果、これらを包括的に支援することの有効性や意義が確認できた。ただし、本支援プログラムの中に、学校場面での支援方法や、情緒・心理面での支援方法等の面で不十分な点や問題点もいくつか見いだされた。これらについて、今後、さらなる検討を加えていく必要があると考えられる。
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