当初、研究計画に基づき、2チャンネルのNIRSシステムで聴覚入力も用いて注意喚起状態の差による脳血流量の変化の検出を試みたが、微少な変化であり、2チャンネルで検出するのは困難であることが判明した。このため、シマズ製作所の協力を得て、多チャンネル光トポシステムを短期間借り受け検討した。多チャンネルのため部位検索の必要性が減少したが、感覚入力による血流変化は微少であり簡単ではなく、予備実験を重ねている。また、光トポシステムはきわめて高価のため機械を用いての検討は十分でない。その過程で、自閉症例といっても認知メカニズム、行動レベルの状態、電気生理学的反応においてもかなり個体差があり、いくつかのタイプに分けられることが見えてきた。われわれの最終目的は自閉症例の脳内メカニズムの解明であるが、その前段階として自閉症例の細分化、サブタイプわけが必要であると感じた。本年度はその細分化に向けて、既存のチェックシートを整理検討し、サブタイプ分けを目的とした多項目チェックシート作成、データベース化を行った。また、その過程で自律神経機能がその細分化に重要であると考えたため、自律神経の定量評価が可能なコンピュータ解析システムを本年度購入した。現在、このシステムでコントロール群のデータを収集しつつある。来年度はこれら結果に基づき、自閉症例を細分化し、そのサブタイプごとにまず、神経心理学的に注意状態をモニターしつつ、行動レベルでの入出力関係の検討を行う予定にしている。
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