本研究は多文化共生社会スウェーデンにおけるインクルージョン教育の展開を、実践的、制度的、歴史的観点から分析することを目的とする。本年度は、主に教員養成大学での専門家養成の調査研究を行った。とくに、スウェーデンでは通常教育教員養成課程改革をうけて、2006年にインクルージョン教育に主に責任をもっ「特別教育家」養成課程改革が行われる予定である。その動向を分析した。具体的には、平成18年7月と8月に渡瑞して、特別教育家養成を行っている、イェーテボリ大学を訪問し、教員養成課程、現職教員の専門性向上のための研修、実習の状況を検討した。イェーテボリ大学の動向に着目して研究を進めた理由は以下である。地方分権化が進むスウェーデンにおいては特定の地域の動向を詳細に検討することが必要である。イェーテボリ大学は特別教育家養成を、大学院レベルに移行する長期的展望をもちつつ改革を進めている大学である。研究成果は4本の論文にまとめた。また平成18年度に締結した高知大学とイェーテボリ大学の全学協定を活用して、高知県とイェーテボリ市の現職教員県研修および教員養成課程に在籍する学生の研修を計画し、実施した。研究成果は平成19年3月に高知大学において公開シンポジウムを開催した。他にも研修成果は平成19年度に日本教師教育学会で報告する予定である。平成18年10月には再度渡瑞して、イェーテボリ大学の研究者と交流して、スウェーデン全体のインクルージョン教育に関する最新の研究動向を把握するよう努めた。研究成果は1本の論文にまとめた。一方で、分析視点を明確にするべく、日本の教員養成大学における特別支援教育に関連する教員養成課程の実態調査にも着手した。研究成果は2本の論文にまとめた。またこれまでのスウェーデンに関する研究成果を著書としてまとめ、公刊した。
|