1.目的:ライフステージを通しての吃音児者の実態に即した支援法構築の一環として、(1)吃音の進展した幼児、(2)不登校を呈する重度吃音学童、の2例を対象とし、言語指導に焦点を当て、環境調整とともに心理療法(遊戯療法、カウンセリング的対応)も併用して支援を試み、その効果について検討した。 2.方法:(1)対象児:事例A:発吃2歳8ヵ月の3歳0ヵ月の女児(未就園)。事例B:発吃7歳0ヵ月の11歳7ヵ月の女児(小学6年)。軽度知的障害(通常の学級に在籍)。10歳8ヵ月頃より不登校。2例共に吃音の意識・回避反応があり、アイオワ式吃音重症度評定尺度による初診時重症度は3(事例A)と7(事例B)。 (2)言語指導:遊戯的要素をとり入れて実施。事例Bについては家庭訪問により実施。(1)メトロノームを用いたリズム効果法。(2)カメ(ゆっくり)、蛙〔玩具を弾ませながら1モーラ(音節)ずつ発話〕などの動きにたとえて発話。(3)柔らかな起声:軟起声でゆっくり、ひき伸ばし気味に発話。吃音が頻出し工夫や回避反応に繋がっている語音に焦点を当てて実施。(4)劇遊び(事例Bのみ):斉唱・復唱等、吃音が抑制されやすい条件を適宜とり入れ、台本音読により実施。指導場面には親も同席、随時指導に参加。 (3)カウンセリング的対応(事例B):本児主導での会話、本児の好む調理やゲームを実施。 (4)遊戯療法(事例A):言語指導終了後に実施。 (5)環境調整:親面接を通して実施。在籍校と適宜連携をとった(事例B)。 3.経過:支援はおおよそ月1回(事例A)、週1回(事例E)のペースで実施。本支援を通して、事例Aは治癒。事例Bは重症度4〜3の範囲に軽快、登校可能となった(中学校入学後は情緒障害特殊学級に在籍)。 4.考察:吃音の進展した幼児、不登校を呈する重度吃音学童に対して、言語指導に焦点を当て、環境調整とともに心理療法も併用して支援を行うことの効果が示唆された。
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