研究計画の最終年度となる2007年度(平成19年度)は、これまでに収集したデータの整理・分析を行いつつ、(1)保育所(障害児保育)から学童保育への接続に関する調査、(2)アスペルガー症候群を中心とする発達障害の子どもの就学問題(接続問題)の調査を行った。 (1)保育所(障害児保育)から学童保育への接続 2007年10月に厚生労働省より発表された「放課後児童クラブガイドライン」に「新一年生については、保育所との連携を考慮し、4月1日より受け入れること」と明記されたように、保育所から学童保育への移行時に生じていた「接続問題」は、調査を行った広島市の学童保育(留守家庭子ども会)でも改善されつつあった。具体的には、2007年度から「4月1日の受け入れ」が実施され、2008年度からは開所時間を18時30分まで延長することに決まった。しかし、「入所待機児童の増加」と「学童保育の大規模化」は深刻であり、調査からは、発達障害を抱える子どもたちにとっては厳しい生活環境となっていることも分かった。また、指導員も安定雇用や研修機会が十分に保障されないなか、試行錯誤で子どもたちを指導せざるを得ない厳しい実態も明らかになった。 (2)障害のある子どもの就学問題(接続問題) 3年間にわたり、広島市内にある法人立保育所で、アスペルガー症候群などの発達障害が疑われる幼児に対して発達検査を実施するとともに、保育場面の観察を行ってきた。今年度は、これまでの映像データを編集、分析を行い、その結果を保育所内の検討会で報告した。その結果、発達障害、特にコミュニケーションに困難を抱えるケースでは、保育者や親はもちろん、周囲の子どもたちの理解と支援によって、かなり状況が改善することが明らかになった。しかし、小学校への接続に関しては、(限られた事例数ではあるが)小学校側の受け入れ姿勢や体制に課題が残されていることが分かった。
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