研究概要 |
当該研究課題の目的に従い、一般のW代数の表現論に関する研究を行った。 W代数は1980年代に物理学者によって導入されたが、実はその数学的研究はそれ以前の1970年代のWhittaker加群に関するKostant-Lynch理論までさかのぼる。従って、Kostant-Lynch理論のchiralizationとしてW代数の理論を整理していくことが数学者にとって理想的かつ効率的な手法といえるだろう。 当該年度は研究代表者が上記考察にもとづきW代数の研究を継続し、新しい視点と結果を幾つか得た。これらを研究成果として国内外で発表し、他の研究者と研究交流を行った。結果のうち、いくつかはすでに論文として投稿済みで、またいくつかについては公表するための論文を現在作成中である。 当該年度に論文として出版された結果は、研究代表者がスーパーコンフォーマル代数に関するKac-Roan-Wakimoto予想を解決したものである:スーパーコンフォーマル代数は弦理論などに現れる興味深い代数系だが,その表現論にLie群・Lie環論における伝統的な手法を適用することは困難であり、新たな研究手法の開発が望まれていた。そんな中、今世紀になってKac-Roan-Wakimotoは、スーパーコンフォーマル代数がW代数として理解できることを示し、その表現論が対応するアフィンスーパーリー環のそれから関手的に従うことを予想した。研究代表者が得た結果はこの予想の解決にとどまらず、その関手的な性質が理想的といえるほどうまく働くことを示したものであり、スーパーコンフォーマル代数の表現論がほぼ完全に対応するアフィンスーパーリー環のそれに帰着することを明らかにしたものである。
|