研究概要 |
「p-進子供のデッサン」の構築のための基礎的研究として、p-進Bruhat-Tits樹木中の二本の直線から得られる可能な不連続群配置の分類・研究を行った。これは群論的視点から述べると、二つの位数有限の一次分数変換から生成されるp-進の不連続群を分類することに対応している。Bruhat-Tits樹木における一次変換の作用は、一つの一次分数変換については、その作用の様子を正確に記述することは比較的に容易であるが、二つの異なる一次分数変換の作用の様子を記述するには、それらの作用間の相互関係を正確に捉える必要が生じる。この相互関係は、各々の一次分数変換の二つの固定点(あるいは対応する「端点(ends)」)をBruhat-Tits樹木の中で結んだ直線、いわゆる「ミラー」の相対的な位置関係で評価できるが、特に小さいpの場合においては、その位置関係を網羅的に分類することは、技術的には非常に困難であった。この技術的に困難な点を克服するための、テクニックを開発することが、今年度の研究の成果の、最も大きな技術的側面である。従って、p-進軌道体一意化に一般的に見られる現象と同様に、この場合もp=2,3,5の場合が困難である。実際には、今年度の研究で得られた技術は、素数pが3と5の場合には、極めて有効に使えるのであるが、p=2の場合には、依然としてその場合分けの数が多く、その分類のための手順は極めて複雑なものとなる。このような事情であるので、p=3,5の場合には、結果的にその分類を完成させることができたが、p=2の場合にはまだ不明な点が残っている。この研究は、従来のグロタンディークのデッサンとの関連や、p-進幾何学における空間の概念に、新しい視座を与えるものとして、最近注目されるようになってきたザリスキーリーマン空間による解釈などを達成するための、最初のステップと見なせるものであるが、このような一般論としての観点については、次年度の研究課題の一つに持ち越されることとなる。なお、今年度の研究においては、上述のザリスキーリーマンついての一般論(リジッド幾何学)についての研究に進展があった。これに関連しものとして、藤原一宏との共著のサーベイ(Rigid Geometry and Applications, Advanced Studies in Pure Mathematics,45,325-384(2006))が出版された。
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