研究概要 |
(1)大域的Whittaker模型を持つ次数2のジーゲル尖点形式と楕円尖点形式の組から、8次のオイラー積を持つ保型的L関数が定まる。このL関数の基本的な解析的性質について論文"L-functions for generic cusp forms on GSp(2)×GL(2):archimedean theory and applications"を完成させ、学位雑誌に投稿した(採録を決定済み)。この論文では,上記のL関数の積分表示の詳しい研究を行ったが、その系としてある種のジーゲル尖点形式のspinor L関数の正則性の別証明を与えた。この別証明の議論は,一変数保型形式でよく知られた議論を転用したものだが,汎用性のある方法であると思われる。 (2)ある種の次数2の非正則ジーゲル尖点形式のフーリエ展開を書き下そうとすると、一般Whittaker模型(Bessel模型ともいう)なるものが現れる。当該年度の研究で、このことが非正則離散系列表を生成する2次のジーゲル保型形式について、その大域的Whittaker模型の実成分の積分表示を得た。これらについては,論文"Generalized Whittaker functions on Sp(2,R) associated with indefinite characters"を作成し、おおよそ完成させた。 (3)次数2のジーゲル尖点形式のspinor L関数を調べる方法としてAndrinanovの積分表示理論が1970年代から知られている。この積分表示から、spinor L関数の性質を引き出すには、対応する局所ゼータ積分の詳しい解析が必要である。実素点においては、上記(2)で述べた一般Whittaker模型の研究によって、基盤整備が進んだ(この点に関しては、先行研究者の寄与も大きいことを注意する)。他方で,分岐有限素点においては,局所新谷汎関数の一意性を証明することが望まれる。これについて、Gel' fand-Graevによる、有限体上の一般線型群のWhittaker汎関数の一意性の議論を参考に、考察を始めた。
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