研究概要 |
$X$は複素数体上射影的な非特異曲面、$H$,$Hl$はその上の相異なる偏極、$(rc_1,c_2)$は$ZZtimes NS(X)times ZZ$の元とする。$X$上の、Chern類が$(r, c_1,c_2)$である$H$準安定な連接層の粗モジュライ空間を、$M(H)$で表す。$M(H)$と$M(H')$は多くの場合双有理同値であることが知られている。したがって両者を結ぶ双有理変換の列を作れ、という問題が浮上する。報告者は両者を結ぶ爆発の列を、階数$r$が一般の場合に、初等変換とsheaf with flagという二つの手法を用いて構成した。現在投稿中である。 既出論文と比較すると次のような特徴がある:双有理変換であるのみならず爆発であり、爆発の中心は安定性の理論より自然に現れる部分集合$M(H)supsetP={[E]|層EはH'-準安定ではない}$に適当なスキーム構造を与えたものに関連する; $M(H)$と$M(H')$の間のみならず、それぞれのuniversal family同士の関係もまた具体的に書け、それは上記の部分集合$M(H)supsetP$の変形理論と結びついていることが示せた; 層のモジュライを直接考える代わりにsheaf with flagを採用することで、階数一般の場合も扱えるようになった。より詳しく述べると、$M(H)$と$M(Hl)$を比べるためには$H$準安定であるが$H'$準安定ではない層$E$を考察する必要がある。そのような層は階数一般の場合、階数が2の時‥この場合は報告者が既出論文で扱った‥に比べて複雑である。例えば$E$はsimpleとは限らず、そのような$E$の周りでは$M(H)$の構造は特に分かりづらい。そこでsheaf with flagで同様の問題を考えると、付加しているflag構造を保存するような層の準同型に話を限定するためにsimpleになり易くなる。よって扱いづらい所を避けることができる。
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