研究概要 |
穴あきトーラスと閉区間の直積に対し,閉区間の内部の1点に射影する穴あきトーラス内の本質的単純閉曲線に対し,その曲線に沿った(適当な枠に関する)r-デーン手術を施すことで構成できる3次元多様体をM(r)と書くとき,以下の成果が得られた. 1.穴あきトーラスに対する組み合わせ的に単純なフォード基本多面体を持つ二つの両側カスプ群を貼り合わせ,得られた双曲多様体に双曲デーン手術を施すことにより,ほとんど全てのデーン手術係数rに対し,M(r)上の双曲構造で組み合わせ的に単純なフォード基本多面体を持つもの(基点)を構成した. 2.M(r)上の幾何学的有限双曲構造に対応するクライン群が二つの幾何学的有限穴あきトーラス群を貼り合わせて得られることから,穴あきトーラスクライン群に対するフォード基本多面体の決定アルゴリズムを応用し,コンピュータを用いた数値実験を行うことで,M(5/3)の幾何学的有限な双曲構造で,1で構成した単純なものから,(曲面群に対するEarle sliceが持つものに類似した)対称性を持つ貼り合わせ写像に関する「不動点」に対応するものへの変形族に対し,フォード基本多面体の組み合わせ構造を決定した.ここで得られた具体例は(数値実験であるため)有限個のものではあるが,Thurstonによる双曲一意化定理の証明に現れる不動点定理を視覚化するという意味において非常に有意義なものである. 3.有限個を除く任意のデーン手術係数rと,2で要請したものと同種の対称性を持つ任意の貼り合わせ写像に対し,基点から不動点に対応するものをつなぐ双曲構造の族に対し,そのフォード基本多面体の組み合わせ構造の候補を構成した.
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