研究概要 |
対称空間内の超曲面に関する研究とその応用に関して,以下の研究を行った. (1)階数が高い非コンパクト型対称空間を考え,その中の等質超曲面を分類する問題に取り組んだ.今年度の成果として,非常に数多くの例を構成すると共に,次のような「固定点定理」を証明することができた: 定理.非コンパクト型対称空間へのcohomogeneity one actionは,次のいずれかの性質を満たす;(i)全測地的軌道を持つ,(ii)境界への作用が固定点を持つ. これらのうち,全測地的軌道を持つ場合は,我々の以前の研究で分類が完成している.すなわち,分類のためには,境界への作用が固定点を持っcohomogeneity one actionのみを考えればよい.別の言い方をすると,放物型部分群に含まれる群の作用だけを考えればよい.この定理を用いて分類問題に取り組むことが,来年度以降の課題である. (2)応用として,Einstein可解多様体の研究を行った.半単純リー群の放物型部分群を用いて,Einstein可解多様体を構成した.構成には,放物型部分群のLanglands分解を用いる.構成された可解多様体がEinsteinであることを示す際には,部分多様体論を用いる.実際,我々の可解多様体は,非コンパクト型対称空間の等質リーマン部分多様体となっており,さらにRicci曲率が同変である(しかも全測地的ではない).結果自体は以前に得ていたものではあるが,これらの考察により,証明を大幅に簡略化することができた.また,この結果は,部分多様体論を用いたEinstein可解多様体の研究,という新たな視点を導入するものである.
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