研究概要 |
Riemann対称対の線形イソトロピー表現はs表現とも呼ばれ,その軌道はEuclid空間の超球面内の重要な等質部分多様体の例を与える.特に球面の典型的な極小部分多様体の多くはこのような軌道によって与えられる.我々はaustere部分多様体と呼ばれる極小部分多様体になるs表現の軌道を分類した.Austere部分多様体の概念は特殊Lagrange部分多様体を構成するためにHarvey-Lawsonによって導入された.我々の分類した球面内のaustere軌道からC^n内の多くの特殊Lagrange錐の具体例が得られる.Austere部分多様体の定義は第二基本形式の対称性に注目しているので,部分多様体の局所的なまたは無限小の対称性を表わしていると考えることができる.ところが,すべてではないが分類したaustere軌道の多くは大域的なある種の対称性を持っていることがわかった.この対称性はaustere部分多様体の定義を大域化したものになっており,鏡映部分多様体の定義を弱めたものになっている.そこで,我々はこの性質を持つ部分多様体を弱鏡映部分多様体と名付け,弱鏡映部分多様体の基本的性質を調べた.さらに,s表現の軌道であって超球面内の弱鏡映部分多様体になるものもすべて決定した. 石川-木村-宮岡は球面内の等径超曲面の理論を使って,Gauss写像が退化する等質部分多様体の研究を行っている.これらの等質部分多様体は$s$表現の軌道として一般的に捉えることができる.そこで,彼らの結果を対称空間論の立場から考察し,s表現の軌道で球面内の弱鏡映部分多様体となるものの幾つかについてGauss写像が退化し,全測地的な球面でfoliateされることを示した.これらの結果は井川治(福島高専)、田崎博之(筑波大学)との共同研究によって得られた.
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