差分ソリトン方程式をさらに離散化することにより、独立変数と従属変数がともに離散の値をとるソリトン系が得られる(ような場合がある)。たとえば、廣田良吾と高橋大輔は2005年に出版された論文で、差分ツィツェイカ方程式を超離散化することにより超離散ツィツェイカ方程式を導いた。一方、差分ツィツェイカ方程式は差分アファイン球面を記述することが知られている(ボベンコとシーフによる1999年の論文)。そこで本研究では、超離散ツィツェイカ方程式に対応する"超離散アファイン球面"を定義すること、を目標とした。今年度の成果は、差分ツィツェイカ方程式の自明解が記述する差分アファイン球面を、通常の手続きによって超離散化したことである。これは、差分アファイン球面の超離散的な対応物が存在することの傍証である、とも期待できるが、しかし、一般の差分アファイン球面の超離散化の仕方は、まだ分からない(このことは超離散ツィツェイカ方程式のラックス表示すらも分かっていないことに対応していると思われる)。 また、中心アファイン平面曲線の適当な発展はコルテヴェーグ・ド・フリース方程式を与える(ピンカールの1995年の論文)ことが知られているが、このことの差分化、すなわち差分コルテヴェーグ・ド・フリース方程式にしたがうような折線の離散時間発展、を得た。なお、超離散コルテヴェーグ・ド・フリース方程式も得られている(辻本諭と廣田良吾による1998年の論文)が、やはり、そのラックス表示は分かっておらず、これらの超離散ソリトン方程式に幾何的な解釈を与えるのは今後の課題である。
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