平面内の折線に対して、その離散時間発展を考える。本研究では、差分コルテヴェーグ・ド・フリース方程式にしたがうような平面折線の離散時間発展を与え、それを周期性の観点などから観察した。 詳しく述べる。以下では1次元格子から平面への写像を平面折線と呼ぶ。平面折線の"曲率"をKで表すと、Kは1次元格子上の函数となるが、離散時間発展によって2次元格子上の函数と見なすことができる。このとき、差分コルテヴェーグ・ド・フリース方程式の解が、函数Kと2次元格子の格子間隔(2つの定数)から定まるような3重対角行列の行列式の比として表示できる。ただし、この文脈で現れる差分コルテヴェーグ・ド・フリース方程式は、独立変数の取り方がいわゆる(廣田の)差分コルテヴェーグ・ド・フリース方程式とは少しく異なり、廣田氏の用語によれば「逆超離散箱玉系」とも呼ばれる2変数の差分方程式である。 以上のことは、2次元格子の格子間隔をそれぞれ独立変数の任意函数にして議論しなおすことができ、その場合には、不等間隔差分コルテヴェーグ・ド・フリース方程式とその解の不等間隔差分による行列式表示が得られる。とくに平面折線が周期3をもつ(すなわち平面折線が3角形をなす)場合、周期性を保ったまま離散時間発展するためには、格子間隔が不等間隔でなくてはならず、このもっとも簡単な例によって不等間隔差分(あるいは差分商ともいう)の重要性が確認できる。一般に平面折線が周期性をもつとき、対応する不等間隔差分コルテヴェーグ・ド・フリース方程式の解もまた周期性をもつ(ただし両者の素周期が一致するとは限らない)が、この逆は成立しない。
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