研究概要 |
統計的推測において、ある母集団分布の母数に対する固定幅の信頼区間(fixed-width confidence interval)を構成したい場合、固定標本数では解決できないことが知られている。この場合、逐次的に推測する方法が考えられる。母集団の数が一つの場合の一標本問題においては、純逐次法(purely sequential procedure)と呼ばれる逐次方式の2次の漸近有効性(asymptotic second-order efficiency)が先行研究により示されている。しかし、母集団の数が二つの場合の二標本問題(two-sample problem)においては、母平均の1次結合の形の母数の推定を除いては、2次漸近有効となる逐次方式が考案されていなかった。Lim, Isogai and Uno(2004)は二つの指数分布の尺度母数の比の逐次区間推定問題に対して、2次漸近有効となる純逐次法を提案した。この逐次法は、区間幅がかなり小さくならないと推定精度が良くならないことがシミュレーションにより裏付けられた。考察の結果、精度が良くないのは最適標本数を定める際に中心極限定理による正規近似を用いていることが原因であるとわかった。それで、推定精度をより良くするには最適標本数をより正確に求めることが必要であるという結論に至った。この問題では、尺度母数比に対する推定量がエフ分布に従うので、Wilson-Hilfertyによる近似の考え方を用いれば、エフ分布のパーセント点をより正確に近似して最適標本数がより正確に求まる可能性がある。この知見により、今後、停止規則(stopping rule)の改良が期待される。
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