本年度の研究は、一般アルファベット情報源の信頼性関数および最小achievableレートの評価を、従来より緩い制限の下で求めることにあった。ただ平成18年度以降に想定されていた定常情報源と一般情報源との関係を調べるという問題において、井原(愛知江南短期大学)が中心となって研究を進めたところ進展の兆しが見られたので、計画の一部変更を行い一般情報源の結果を定常無記憶ガウス型情報源へ適用する研究を行うこととした。 まず韓(電気通信大学)の提唱する一般情報源の場合には、最小achievableレートはエントロピースペクトル上限を用いた評価が従来より与えられていた。エントロピースペクトル上限とは定常エルゴード過程におけるエントロピーレートの拡張であり、この評価は古典的な情報源の場合の比較的自然な拡張であると考えられていたが、具体的な定常情報源に対する最小achievableレートの評価を与えているかどうかは知られていなかった。今年度の研究では定常無記憶ガウス型情報源を一般情報源として捉えたときの最小achievableレートに対し難しい上からの評価を与えることに成功し、平成12年に井原・久保が与えた結果と一致することが確かめられた。これは一般情報源の理論が古典的情報源にも適用可能である例を示したことになり、一般情報源と古典的情報源との関係を調べる上で重要な意味を持つ。現段階ではこのケースが証明されているに過ぎないが、この分野において新しいアプローチが開けたといってよく、平成18年度以降の研究に対し大きな足がかりになるものと考えられる。
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