研究概要 |
指数型汎関数の期待値を最小化するリスク・センシティブ確率制御においてある種の特異極限を用いて得られる微分ゲーム問題は,頑健性を考慮に入れたH無限大制御と捉えることができる.リスク・センシティブ確率制御との関連からこの微分ゲームにおいて制御がノイズと相関があるケースを考えるとき,通常使われる発展的可測な戦略は正しい戦略のクラスを与えない.近年,W.H.Flemingは発展的可測な戦略より狭いクラス「狭義発展的可測」を提案し,時間変数を離散化することにより微分ゲームにおけるIsaacs方程式と狭義発展的可測戦略から決まるゲーム値関数を対応づけた.この研究を動機として動的計画法(Dynamic Programming Principle)の観点から一般の有限時間微分ゲーム問題において,戦略のクラスが与えられたときそれから決まるゲーム値関数に対応する非線形半群とその生成作用素との関係を粘性解の枠組みで明らかにした. 拡散過程に対するDonsker-Varadhan型の大偏差原理は拡散過程に関連する2階線形作用素の正値解の構造と関係し,特にcritical value (principal eigenvalue)に対応する解が重要であると考えられている.Donsker-Varadhan型大偏差原理においてノイズの強さを表すパラメータを組み込んだとき,critical valueのノイズパラメータに関するオーダーを規定する係数,またcritical valueに対応する正値解の指数的減衰度を表す関数の組は1階エルゴードBellman型方程式を形式的に満たす.2階線形方程式の正値解の結果を考慮に入れ,1階エルゴード型Bellman方程式を粘性解の枠組みで解の構造を調べ,2階線形方程式の正値解の構造と同様にcritical valueが存在することを証明した.
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