研究概要 |
本年度は昨年度に引き続き次の3点を中心に研究実績を上げた. 1.Tsallisエントロピーの情報理論的性質の研究 2.非加法的統計力学における行列トレース不等式に関する研究 3.Tsallisエントロピーを用いたエンタングルメントの数量化に関する研究 以下では,上記の実績に関して詳しく述べる.まず,昨年度の主な結果として,Tsallisエントロピーの一意性定理について完成したこととTsallis相対エントロピーの数学的性質について調べ上げた結果を受けて,本年度は,Tsallis条件付エントロピーを定義し,連鎖即及び劣加法性を証明した.これによって,Tsallis相互エントロピーを定義した.その結果,データ処理不等式や伝送レートに関する応用的結果をTsallis統計の下で示した.これは,米国物理学会誌Journal of Mathematical Physicsに掲載された.この結果に関して,最近,インドの研究者から問い合わせがあり,学習論に応用したいので協力して欲しいとの要請があった.今後の共同研究への発展へと期待したい.次に,数学的色彩が強い結果として,統計力学において重要なルジャンドル変換の一種とみなせる変分表現を量子系におけるTsallis相対エントロピーについて証明した.これを利用して,ポルトガル人のBebiano等の結果を拡張ができた.この結果は,国際ジャーナルLinear Algebra and its Applicationsに掲載された.最後に,物理よりの内容として,エンタングルメントの数量化に応用した.量子計算を行う際に,エンタングルメントを持続することが必要であり,これを科学的に扱うには数量化は避けて通れない.相対エントロピーのパラメータ拡張としてのTsallis相対エントロピーをエンタングエメントの尺度とした時の数学的性質を調べた.この結果は,国際ジャーナルINFORMATION誌に掲載された.
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