研究概要 |
早稲田大学山崎昌男教授との共同研究において,平行平板間におけるNavier-Stokes方程式の初期値境界値問題に対する時間局所解の構成を行った.この間題についてはn乗可積分関数全体を初期値のクラスとした時間局所解の構成がよく知られているが,本研究では負の微分可能性をもっようなSobolev空間やBesov空間を初期値のクラスに設定した.これらの初期値はn乗可積分関数よりも微分可能性が弱く,初期値のクラスとしてより広い関数空間を扱うことが可能になったことを意味する.現在,Helmholtz分解とStokes作用素のレゾルベント評価は可積分性を表す指数pが1<p<∞の範囲しか得られておらず,特に空間無限遠で減衰しないような初期値を扱うことはできないが,今後の研究で明らかにすべき課題であると考えている. 次に,平行平板間において,下の板では斉次Dirichlet境界条件,上の板では非斉次Neumann境界条件を課したStokes方程式の非定常問題に対する解のmaximal regularityを証明した.この間題についてはAbelsにより有限時間区間におけるmaximal regularityが既に得られていたが,本研究では無限時間区間まで含めたmaximal regularityを扱っている.このために,まずは非定常問題に対応するレゾルベント問題の解析を行い,この境界条件下でのStokes作用素が解析半群を生成することを示した.レゾルベントパラメータが0の近傍にある場合を詳しく調べたため,この解析半群が指数安定であることも得られた.この結果と有界領域におけるStokes方程式の解のmaximal regularityを示したShibata-Shimizuによる作用素値のFourier multiplierの定理を基礎とした方法により,平行平板間におけるStokes方程式の解のmaximal regularityを得た.この結果は平板上に存在する非圧縮性粘性流体の自由境界問題を扱うための基礎になるものであり,今後はこの研究に着手したいと考えている.
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