本研究は、当初、ポアソンシュレーディンガー作用素のスペクトルの決定問題を目標として申請されたが、申請が許可された段階で、問題が解決してしまったため、急遽、研究対象を、デルタ型ポテンシャルがポアソン分布するモデルに変更した。 自己共役性が示せ、admissible potentialの概念がうまく定義できたと仮定すると、二つのサイトポテンシャルの相対位置を変えることで所望の結果が証明できることがわかったが、肝心の自己共役性の証明がうまくいかず、成果は得られなかった。 その後、科研費を利用して参加した岡山大学での数学会で、偶然、埼玉大学の太田雅人助教授と会い、問題について話をするうちに、線形シュレーディンガー作用素の理論を援用して、デルタ型のポテンシャルを持つ非線形シュレーディンガー方程式に応用できるのではないかと思うようになった。 科研費を利用して埼玉大学に出張させていただき、周期的なデルタポテンシャルを持つ非線形シュレーディンガー方程式について議論する機会を得た。太田助教授は、1点デルタデルタポテンシャル(point defect)のあるモデルについて、研究を進めておられたため、問題の定式化については、ほぼ正しい方向が見えてきた。 研究のテクニカルな部分については、時間の制約もあって十分な議論ができていないが、線形の場合の転送行列の方法に類似した、ある種の離散力学系の研究が応用できるのではないかと考えており、現在、この方向で研究を推進中である。もちろん、周期的であるのは、最も研究しやすい対象だからであり、今後、ランダムな場合や準周期的な場合などにも研究を拡げる可能性もある。
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