研究課題
物理的にも重要な、Schrodinger方程式や波動方程式の非自己共役摂動を考察し、その場合の解の挙動と生成作用素のスペクトル構造の関連について研究、発表を行った。具体的にはランク1の摩擦項を伴う波動方程式の解の挙動をその生成作用素のスペクトル構造と関連する初期データにより完全に分類することに成功した。但しその際の仮定はやや厳しく、リゾルベントの特異点が一位となるものである。このとき、摂動項がある意味で大きいと、固有値が複素下半平面に唯一つだけ現れ、それに対応する初期データを選ぶと、その時間発展としての解の全エネルギーは指数的に減衰する。一方、摂動項がある意味で小さい場合には固有値は現れず、対応する初期データの時間発展としての解は散乱状態になる。これらの結果の証明は、一般化されたParsevalの等式の確立によりなされる.そのために,定常散乱理論でよく知られている波動作用素の存在、スペクトル表現が必要となる。この結果は論文Parseval formula for wave equations with dissipative term of rank oneとしてまとめ、現在投稿中である。なおリゾルベントの特異点がもはや一位とはならない場合の考察については波動方程式に限らず、Schrodinger方程式に対しても考察中であり、部分的な結果もいくつか得られてはいるが、その証明は現時点では問題の特殊性に依拠したものといわざるを得ず、より統一的な証明を目指して現在研究中である。今後はこの問題を考察し、更に物理的にも興味深いモデルの数学的な考察を深めていきたい。
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Advanced Studies in Pure Mathematics (ASPM); Proceedings of MSJ-IRI 2005 "Asymptotic Analysis and Singularity" (Sendai, 2005). (to appear)