超平面孤立特異点に付随する代数的局所コホモロジーとそのannihilatorである偏微分作用素からなるホロノミック系を用いることにより、ホロノミック系の不変量と特異点の不変量との関係について調べた。1970年代における斉藤恭司氏による研究などにより、特異点と微分作用素系とが結べつけられることが知られているが、申請者はこれまでの研究において、偏微分方程式系をD-加群の範疇で捉えなおすことにより、ホロノミック系の不変量と特異点の古典的不変量との関係を示唆する結果を得ていた。本研究ではさらに、矢野環氏によるb-関数の研究の中で導入されている不変量と我々の導入した不変量との関係について調べた。 その結果、正則ドラム複体が原点においてexactとはならないことで知られているReiffenの特異点に関して、我々の導入したホロノミック系の不変量とintegral closureとの間に成り立つ関係式を得た。 またこれまで困難であった、特異点の定義方程式がパラメーターを含んでいる場合のホロノミック系の計算を可能とするアルゴリズムを導出し、プログラミングを行った。 これらの研究成果について、ホロノミック系の不変量に関して、7月に行われたロシアでの国際研究集会で発表し、ホロノミック系の構成に関して、9月にスペインで行われた国際研究集会で発表した。これらの研究成果に関して論文を執筆し、投稿した。b-関数とホロノミック系に関する考察についての研究過程を12月に京都大学数理解析研究所で行われた研究会で報告し、現在論文を執筆中である。
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