研究課題
今年度は以下の二つのテーマについての研究を行った。1.XXZ模型におけるグラスマン構造昨年度までの研究で、一次元の可積分量子スピン鎖であるXXX模型およびその拡張であるXXZ模型・XYZ模型の相関関数の代数的表示式を構成した。今年度は、同様の表示式をdisorderパラメータの入ったXXZ模型に対して構成した。この表示式は量子代数U_9(slz)を用いて構成されるが、結果として得られる公式は反可換な二つの作用素を用いて書き下すことができる。これらの作用素は、場の理論における消滅作用素のような働きをなすもので、可積分な量子スピン鎖の研究においては全く新しい対象である。これに対応する生成作用素にあたるものを構成することが今後の課題であるが、これらが構成されれば、量子スピン鎖における局所作用素のなす空間に対する場の理論的な考察が可能となり、重要な物理量の具体的な計算の可能性が広がるものと期待している。2.非対称マクドナルド多項式を用いた量子KZ方程式の特殊解の構成量子KZ方程式は、量子アフィン代数の表現論におけるintertwinerの行列要素が満たす差分方程式系である。物理学との関連としては、可解格子模型の相関関数が満たす方程式系としても知られている。Di FrancescoやZinn-Justinによる最近の研究で、この方程式のある特殊解が、alternating sign matrixの数え上げという組合せ論の問題や、代数群の表現論の幾何学において興味深い対象であるJoseph多項式と関係があることが明らかとなった。我々は、このような特殊解をアフィンヘッケ代数の表現論を用いて解釈し、非対称マクドナルド多項式を用いることによって、同様の特殊解が他にも構成できることを示した。我々の結果を用いて、Di Francescoらによる発見を、アフィンヘッケ代数の表現論や、それに関連する幾何学の立場から数学的に理解することができるのではないかと期待している。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Letters in Mathematical Physics 76, no3
ページ: 201-208
Annales Henri Poincare 7, no.7-8
ページ: 1395-1428