研究概要 |
複素1変数多項式の力学系の研究において,くりこみは重要な役割を果たしてきた.例えば,Mandelbrot集合の境界(2次多項式で分岐が起きるパラメータ集合)の自己相似性は,多項式類似写像として定義されるくりこみ可能なパラメータ集合が,Douady-Hubbardのstraightening定理によって与えられる写像(straightening写像)によってMandelbrot集合と同相になることで示すことができる.2次多項式類似写像族においてはstraightening写像は常に連続であるが,3次以上の多項式類似写像族の場合には一般に連続ではないため,このような多項式の分岐パラメータ集合の自己相似性は完全には成り立たないものと予想されていた. 前年度までの研究で,くりこみ可能な3次多項式族のstraightening mapが不連続になる例を構成することに成功していた.今年度は,これを更に推し進め,放物型分岐や,Misiurewicz多項式の分岐を深く調べることで,このような不連続性が常に起きていることが示せた.より具体的には,Misiurewicz多項式の近傍ではstraightening map常に連続にならないことを示した. また,この証明には,2つの多項式を(一般により次数の低い)多項式類似写像に制限したものが解析的共役だった場合,その共役を拡張していくことで,ある別の多項式から元の2つの多項式が同時に半共役になり,特に次数は等しくなる,という前年度の結果を用いている.このような半共役な多項式がどの程度例外的かを知るために,Rittの多項式の合成による分解に関する結果などを用いて分類し、Chebyshev多項式の場合、対称性を持つものが冪乗で半共役になる場合、写像の合成の順序を入れ替えた揚合のみで生成されることがわかった。
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