本年度は高スループット三次元分光器のための分布屈折率レンズを利用したイメージスライサーの製作および性能評価実験を行った。製作に先立ち、紫外線硬化型接着剤の透過率測定を行い、十分な透過率を持つ接着剤を選定した。製作に使用した分布屈折率レンズは日本板硝子株式会社製の直径0.35mmのもので、ピッチ数が1、2、3の3種類の長さを持つものを用意した。これらをアレイ化し、入射側および出射側に直角プリズムを取り付け、分割数が4×5のイメージスライサーを製作した。製作したイメージスライサーを用いて実験室において分光実験を行い、原理通りに三次元分光データが得られることを確認した。 次に、このデータから透過率やそのばらつきを測定した結果、透過率のばらつきについては、1ピッチ、2ピッチの分布屈折率レンズを透過した像についてそれぞれRMS4〜7%と、十分に高い一様性を持つことがわかった。一方で、分光光学系でのけられを含んだ透過率の値は20%程度と低くなった。これは主に、スライサーからの出射光の光軸が設計の方向からずれてしまっていることにより、分光光学系でのけられが大きくなっていることが原因と考えられる。 以上のように、本年度の研究を通して、十分な性能のイメージスライサーが製作できる可能性を示すことができた。しかし一方で、製作方法における課題も明らかになった。出射光の光軸のずれは、出射面にプリズムを取り付ける角度のずれによるものが大きい。そこで、この点を改善するために、プリズムの角度を保持する冶具を用い、さらに参照光を利用することで、取り付け精度を高める製作方法を検討した。
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