研究最終年度の今年度は、前年度までに試作実験を通して確立した製作方法を用いて、実際の観測に使用するための4分割イメージスライサーを完成させた。本研究で使用した分布屈折率レンズは、直径0.5mm、長さ1周期あたり30mmで、イメージを4分割するために最長3周期の長さのレンズを用いた。製作にあたっては、昨年度構築した出射光の平行性を確認しながら出射プリズムを固定するための光学系を利用し、昨年度の試作スライサー同様、10分角程度の出射光の角度精度が達成できた。こうして製作したイメージスライサーについて、He-Neレーザー(波長633nm)での透過率を測定したところ、一番長い3周期のレンズを通る光についても、約70%と従来の三次元分光装置に匹敵、または上回る値が得られた。また、製作したイメージスライサーによって、原理通りに入射イメージが出射側に再結像されている様子を確認できた。これにより高スループットでの三次元分光観測が行える可能性を示すことができた。 また本研究では、イメージスライサーの開発と並行して、観測計画を策定するために、観測対象の候補の一つである高赤方偏移銀河についての事前調査を進めてきた。この事前調査を通して、北黄極領域のz=4.9のライマンα天体について、輝線の等価幅が小さなものほどクラスタリングが強い可能性を発見した。これは等価幅の小さい天体ほど大質量のダークハローに属し、早い時期に形成された銀河であることを示唆するものであり、ライマンα天体と他の高赤方偏移銀河の関連を調べる上で重要な手がかりとなりうる結果である。
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