活動銀河中心核の正体である超巨大ブラックホールの形成論を解き明かすためには、ジェットやガス降着といったブラックホール周辺での現象を調べる必要がある。今年度は、昨年度に引き続き、2次元輻射流体シミュレーションを用い、ブラックホールへ逃す降着流の物理をより現実的に調べた。 昨年度までの研究で、降着円盤の光度がエディントン光度(輻射圧が重力を凌駕する光度)より大きくなり得ることがわかっていたが、それにも関わらず、ガスが降着できる理由は、密度場の非一様性と光子捕獲であることがわかった。ほとんどの光子は、円盤の回転軸方向から解放されるため、赤道面に沿う降着ガスの流れを妨げない。さらに、円盤部の光子はガスもろともブラックホールに吸い込まれる。この二つの効果で円盤部の輻射圧が下がり、ガスが降着できる事を解明した。 また、中心天体が中性子星の場合の降着流についても研究を行った。中性子星周囲の降着円盤は、ブラックホール降着円盤より、激しいガス噴出を行う事がわかった。この結果は、強力なジェットを示す天体SS433の正体が中性子星である可能性を示唆するものであり、高エネルギー天体の理解に一石を投じるものである。 さらに、宇宙初期に形成される降着円盤の構造と安定性を調べた。初期宇宙では重元素が非常に少ないため、ガスの冷却効率が悪く、円盤の構造や安定性が異なる可能性がある。その結果、初期宇宙の円盤が激しいアウトバーストを起こす事を示した。このバースト現象は、近傍宇宙の降着円盤で起こるものよりも、10倍から100倍も激しい。バースト光度や継続時間を調べた結果、このバースト現象は、次世代光赤外望遠鏡で実際に観測可能であることも示した。
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