本研究では、THz帯の高感度超伝導受信機の開発を行なっている。1THz付近で広帯域動作するSISミクサを作製するためには、20kA cm^<-2>程度の高い臨界電流密度(J_c)を持ったSIS接合が不可欠である。このような高い臨界電流密度と、小さいリーク電流を同時に実現するためには、極めて薄く(1-2nm)、かつ欠陥の少ないSIS障壁層を作製する必要がある。トンネルポテンシャルの低い窒化アルミニウム(AIN)はこのような障壁層の素材として有望であるため、天文台にてNb/Al-AlN/NbのSIS接合を作成して150GHz帯の超伝導素子を作成した。その結果、臨界電流密度は3kA cm^<-2>と低いものの、R_<sg>/R_N>20とリーク電流の少ない高品質の超伝導素子の作成した。この素子を用いて超伝導ミクサの受信機性能試験を行ったところ、145-165GHzに渡り受信機雑音温度(DSB)40K以下と量子限界の6倍以下の性能を示し、AlNを用いた超伝導素子が高感度応答することが実証された。 しかしTHz受信機用高臨界電流密度のAlN膜SIS接合で所望の値を得るためには、作製時の窒素プラズマを弱電力条件で維持する必要があることがわかった。そこで、AlN膜の安定した作製プロセスを実現するために、天文台が所有するスパッタ装置の電力条件を高精度制御できる電源出力アッテネータ(減衰器)を導入し、所望の電力を得ることにした。 またTHz帯での一体型サイドバンド分離超伝導のデザインを行った。
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