研究概要 |
本研究の目的は、活動銀河核(AGN)の莫大な放射パワーの源である質量降着過程を明らかにするために、AGNの中心0.1pc(3×10^<15>m)の領域において降着物質の物理状態を調べることである。具体的には、AGNの近傍から放射される水蒸気メーザーをモニター観測することで、高密度分子ガスの空間構造や運動を調べ、また、多周波連続波観測によってプラズマの空間分布を描き出し、二つの異なる相にある降着物質の遷移を明らかにする計画である。 2005年11月-2006年1月にかけて、米国国立電波天文台(NRAO)のGreen Bank Telescopeを使って活動銀河NGC 1052が放射する水蒸気メーザーのスペクトルをモニター観測した結果、速度幅が狭い(<20km/s)メーザー成分が2ヶ月間に3回も増光(バースト)する現象を発見した。この結果は、メーザーを励起している暖かく(T>400K)高密度(n_H>10^7cm^<-3>)な分子ガスが、0.002-0.005pcという小さなサイズで非一様であることを示している。この結果は野辺山45m鏡を用いた観測結果(Kameno et al. 2005,ApJ,620,145)を確認するもので、日本天文学会2006年春季年会S04bにて報告した。 並行して、NRAOの電波干渉計VLBAを用いてメーザーとプラズマの空間分布を描き出すマッピング観測を2005年12月と2006年1月に実施している。こちらの結果は解析中であり、早急に結果をまとめる手はずとなっている。
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