本研究の最初の課題は、遠赤外線検出器の過渡応答補正方法の確立であった。そこで、これまでに行われたASTRO-F衛星(平成18年2月22日に打ち上げられ、現名称「あかり」)搭載品Ge:Gaアレイ遠赤外線検出器の実験データを整理し、過渡応答に必要な物理量である、検出器の(1)光伝導ゲイン、(2)ホール密度の電場依存性、(3)ホール注入電極のポテンシャル障壁、をアレイ検出器の全ピクセルについて求めた。また、ロシアの検出器理論家B.Fouksやパリ天文台のA.Coulaisらと議論を進め、彼らの理論をもとに過渡応答の数値モデルをプログラミングし、ASTRO-F衛星による遠赤外線画像解析を行うための過渡応答補正ツールを作成した。 一方、Ge:Gaアレイ検出器バックアップ品と可動光源を用いて、現実的な光変動を伴う過渡応答データを取得した。そして、上記のプログラムを実際にこの実験室データに適用し、過渡応答補正の実現可能性を確認した。 並行して、米国Spitzer衛星による近傍楕円銀河の観測プログラム(PI:Kaneda)が平成17年9月までに終了し、データ解析を進めた。この観測プログラムの主旨は、楕円銀河の星間空間におけるダストとプラズマの相互作用を調べるというものであった。平成17年8月にCaliforniaで行われたデータ解析研究会に出席し、Spitzer衛星の中間・遠赤外線データの解析方法について学んだ。また、中間赤外線分光観測の結果について、プラズマに埋もれたダストの特異な性質を発見し、その成果を米国の投稿論文Astrophysical Journalで発表した。さらに、平成17年11月にCaliforniaで行われたSpitzer Science Center Conference 2005に参加し、楕円銀河の中間・遠赤外線撮像観測結果について報告した。ASTRO-F衛星による近郷楕円銀河の観測プログラムについても議論を重ね、観測ターゲット、観側手法などを決定した。
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