本研究の目的は、小型衛星に立脚した次世代の硬X線・ガンマ線モニターとしての実用化を目標に、ピクセル型テルル化カドミウム(CdTe)半導体に基づく高精度なガンマ線検出器を中心とした、コンパクトで独立性の高い観測システムを制作する事である。本年度は、特に1.4mmピッチのピクセル検出器を、厚さを0.5から1mmといくつかに変えて複数製作し、その比較をした。CdTe検出器の特性であるホールの低い移動度がもたらす電荷収集効率の観点から、検出器の厚さが0.75mmより大きくなると、数パーセントを切る高いエネルギー分解能を得るには、2000Vに迫るバイアス電圧を必要とする。CdTe素子の評価の結果、現状ではそれだけの電圧で安定動作するCdTeダイオードは多くない事が分かった。本計画の性質から、検出器の歩留まりの高さも無視できないため、基本的に0.75mm厚よりも薄いCdTe検出器を用いるべきという指針が得られた。これを受けて、本番用のCdTeピクセルを購入した。現在、検出器としてのくみ上げを行っている。また、SpaceWireシリアルI/Fを搭載した超小型コンピュータSpaceCubeを購入し、実績のあるアナログLSI読み出し回路システムと接続する作業も行っている。 CdTe検出器とそのシステムの開発作業に加えて、400ミクロンピッチで4cm四方と言う大面積のSi両面ストリップ検出器の動作試験を実施した。この結果は、検出器の国際研究会でも発表している。この検出器は、開発しているCdTeピクセル検出器と同じ読み出しシステムを用いており、エネルギーの高いX線に対して検出効率が大きく劣るものの、同じチャンネル数でより大きな面積をカバーでき、システムを簡素にできる利点がある。試験の結果、優れたエネルギー分解能を併せ持つ事が実証され、CdTeピクセル検出器を補佐する検出器として有望であることが分がった。
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