7^Hはt+n+n+n+nの基本構造を持つと期待されているが、中性子が非常に弱く結合しているので、この原子核で初めて観測されるようなエキゾチック構造をもつ可能性がある。例えば、2個の中性子が自由な状態では、核力がほんの少し弱いばかりに、ぎりぎり束縛しない(数10keV)。しかしながら、陽子からの引力増加と、運動エネルギーの自由度の減少により、7^Hの中ではダイニュートロン(2中性子)が束縛すると思われる。このダイニュートロン相関の重要性は、11^Liや6^Heのハロー核においては、我々のグループ等によっても指摘され、明らかになっている(科学研究費課題番号14740142等)。本研究課題では、地球上で観測されている中で最も中性子過剰な原子核7^Hを研究対象として取り上げている。しかしながら、少なくても、5体系以上の量子力学的少数多体問題を解く必要があり、数値計算上も、以前どして最前線の課題である。更に、この系は共鳴状態でもあるので、このような数値計算は世界的に成功した例もない。 平成19年度は、これまでの準備研究をもとにして、7^Hをt+n+n+n+nとp+2n+2n+2n模型のカップルチャンネルで分析を行った。このような多体カップルチャンネル問題を解くのは、世界的に見ても例がないと思われるので、方法面の進展において、大きな成果を出した。また、これは、2n(2中性子)のダイニューロン相関を直接取り扱う模型であり、7^Hの励起状態にこのような状態がある可能性を初めて示唆し、物理的な成果をあげた。これらの方法面の進展と、物理面での新たな発見について、ギリシア(アギオス ニコラス)で行われた国際会議「核構造と天体核反応の最前線(FINUSTAR2)」の口頭発表に採択され、発表を行った。現在、詳細分析をほぼ終了し、論文としてまとめており、近日、論文発表を行う。
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