研究概要 |
中性子不足アクチノイド核種領域の特異な壊変形式である電子捕獲遅延核分裂(ECDF)とその微弱なα壊変を詳細に調べることは,地球上にこれまでウランより重い元素が存在しない理由を明らかにするだけでなく,超アクチノイド元素の原子核質量値を実験的に与え,原子核の不安定領域における安定性について新しい知見を与えてくれる. 本年度は,当該研究題目の初年度にあたる.本研究の実験計画に従って,この初年度では主にデータ収集系に関わる実験機器の整備を行った.これまで本研究では,昨年度までの申請(平成14年度〜16年度:超アクチノイド元素からの破れたα壊変連鎖の解明)から引き続く研究実績をもとに今回の申請では研究実験の高度化を図っている.従来のオンライン実験では日本原子力研究所(現,日本原子力研究開発機構)のタンデム加速器で入射ビームを供給し,付設の実験機器やデータ収集系を使用してきた.しかしながら,割り当てられたマシンタイム時間や加速器形式に限られたビームエネルギーとビーム種,ビーム強度では観測目標とする核壊変に対して,必ずしも満足できる統計イベントが得られなかった.そこで,理化学研究所加速器基盤研究部の羽場宏光研究員の支援により,これまでのオンライン実験について,理研のAVFサイクロトロンを使用し,そのための実験整備を行った.具体的には,原研-理研間もしくは他の実験施設を含め,個々の実験ごとに独自のデータ収集システムによるスタンドアロン形式で行うことにした.この方式により,オンライン実験の準備期間における大幅な時間短縮とデータ解析の高効率化が期待できる.この観点から,本年度ではデータ収集システムの整備として,岩通計測株式会社のリストデータ収集システム(VME計測の16ch入力マルチイベントPHA&LISTモジュールA3100)を購入した.本年度は,このシステムの立ち上げと動作確認(密封線源や環境中の放射性同位元素などを使用したオフライン実験.その結果,機器の正常化を確認.)を行い,データ収集系機器の取扱いや解析方法について研究を行った. この測定機器整備と並行し,本研究と関連がある原子力機構でのオンライン実験(^<248>Cm(^<18>O,α3n)反応で生成する^<259>Noのα-γ核分光実験)を行った.この実験で用いられるガスジェット搬送結合型回転捕集システムは,本研究のECDF測定装置の開発に関係しているので,オンライン実験を通し,装置システムについての技術習得を行った.
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