メルボルンのグループによる、2核子散乱を正しく記述する最先端の複素型有効相互作用を用いて2重畳み込み(double-folding)ポテンシャルを計算するに先立ち、この相互作用の正当性に対するさらなる検証を行った。具体的には、この有効相互作用の重ね合わせによって標的核が連続状態に励起する陽子入射反応を記述し、スピン偏極量A_yの計算を行い、実験データを再現することに成功した。この物理量は、これまで4半世紀もの間誰も再現できなかったものであり、今回の成果は、メルボルンの有効相互作用だけでなく、研究代表者が構築に携わった反応模型の信頼性を如実に示すものと考えられる。 一方、不安定核反応の解析における畳み込み(folding)模型の重要性を示すべく、天体核物理学の分野で重要な課題である^8B生成反応断面積の精密決定にこれを応用した。太陽ニュートリノ問題とも密接に関わるこの断面積を精密に決定するためには、正確な反応理論と、反応粒子間の信頼できる光学ポテンシャルが必要となる。研究代表者はfolding模型を用いて光学ポテンシャルの計算を行うことで、^8B生成反応断面積を決定する際に問題となる、光学ポテンシャルの不定性を実質上排除することに成功し、この断面積の正確な決定を行った。この成果はPhysical Reviewで出版され、また、2005年に東京大学で開かれた宇宙物理学の国際シンポジウムOMEG05の招待講演に選定された。 平成17年度の研究により、メルボルンの有効相互作用が実際の様々な反応解析で機能すること、不安定核反応において本研究計画が提唱する微視的光学ポテンシャルの重要性が明確に示されたと考えられる。
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