研究概要 |
本研究ではドリップライン近傍の高アイソスピン共鳴状態を不安定核と陽子の共鳴弾性散乱により測定し、中性子または陽子ドリップライン近傍の高アイソスピン核における一粒子軌道に関する知見を得ることをめざす。これにより不安定核構造や天体核反応の議論に役立てることができると考えている。 実験では我々が開発した低エネルギー飛行分離法により、核子あたり5MeV程度の低エネルギーRIビームを生成する。これを陽子標的に照射し、反跳陽子を検出することにより共鳴弾性散乱を測定する。この方法によりこれまで困難であった不安定核の共鳴準位の測定を行い、それらの共鳴パラメータ(エネルギー、巾、スピン・パリティー)を決定する 本年度は東京大学原子核科学研究センターの低エネルギー不安定核ビーム分離器CRIBを用いて核子あたり約5MeVのRIビーム8Bの生成に成功した。この^8B2次ビームはサイクロトロンにより加速された^6Li1次ビームから、逆運動学の^6Li(^3He,n)^8B反応を用いて生成された。最近のイオン源性能の向上のため500pnA程度と大きい一次ビーム強度が得られたこと、^3Heガス標的を液体窒素で冷却して厚さと冷却効率を向上させたことにより、2次ビームの強度10^4個/秒を達成することができた。これは共鳴弾性散乱の測定を行うには十分な量である。 次に、この低エネルギー^8Bビームを陽子標的に照射して、共鳴弾性散乱^8B+p→^9C^*→^8B+pの励起関数の測定を行った。^8Cの励起状態はこれまで第1励起状態しか知られていないが、本データの解析を今後進めることで、第1励起状態より上の励起状態の同定をすることをめざしている。本実験と昨年度本研究課題で行った^8Li+p共鳴(^9Be^*,T=3/2)の実験は、ともに質量数A=9とアイソスピンT=3/2をもつ状態を対象とし、相補的な実験となっている。全体の解析結果から^9Liや^9Cの核構造の知見が得られると期待している。
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