本年度は、1)回転超流動星内部で重要な影響を与える磁場に関係する研究、2)球殻モデルを用いた二流体不安定モードの研究、を主に行った。 1)超流動中性子星の平衡状態とその振動に重要な影響を与える磁場の影響を見るため、その第一段階として、中性子物質が常流体の場合の平衡状態の研究を行った。まず、一様回転を仮定し、磁場分布に関しては、ポロイダル磁場とトロイダル磁場両方を考慮して解析を行った。これまで、磁場の両成分を考慮した研究はほとんど無かった。得られた結果からトロイダル磁場を含んだ形状がより強い磁場のエネルギーを蓄えられることが分かった。この成果は、Astrophysical Journal Supplement誌に投稿し、既に受理されている。次に、この解析を作動回転の場合に拡張した。得られた結果から作動回転の効果は、磁場なし星の場合とは大きく異なり、それほど強い影響を与えないことが分かった。これは磁場がある場合には、作動回転をしていても、必ずしも星表面での遠心力が弱くなる訳ではないからであり、磁場星特有の回転則によるものである。摂動論を用いずに作動回転まで考慮した磁場回転星は世界で初めて得られたもので、現在論文を執筆中である。 2)回転超流動星の二流体不安定モードの基本的な性質を見るために、簡単な球殻モデルを用いた解析を行った。このモデルは、初めて超流動体に二流体不安定が存在することが確認された時に用いられたモデルである。オリジナルモデルは一様回転の場合だけ解析されていたが、今回は、この球殻モデルを作動回転の場合に拡張するための定式化を完成させ、固有モードを計算するための数値コードの開発をほぼ終了した。今後、このコードを用いて詳しい安定性解析を行う予定である。
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