大きく分けて2つの成果があった。1つは宇宙のバリオン数生成のメカニズムに関するものである。超対称性理論においてスクォークやスレプトンで構成される平坦方向場によるアフレック・ダイン機構は、効率よく宇宙のバリオン数を生成できる。このメカニズムが働くためには、インフレーション中に、平坦方向場が大きな期待値を持っていないとならない。通常はケーラーポテンシャルの4次の項を使って出てくる負のハッブル質量項によってこれを達成している。本年度の研究では、この場合以外にも、ハッブルA項によっても大きな期待値が達成させることを示し、より広くアフレックダイン機構が働くことを突き止めた。 2つ目は、粒子の崩壊によって出てくる光子によって宇宙は再電離されるが、WMAP3年間のデータによって、それがどのくらい制限されるかを議論した。また、同時にSDSSの観測によってわかっているz=6になって初めて電離率が1になることも考慮に入れ、最尤法を用いて粒子の崩壊のシナリオで、その寿命と存在量の2つのパラメータを調べた。すると、比較的短い寿命のものは偏光のデータによって排除されることがわかった。
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