研究概要 |
近い将来,International Linear Collider(ILC)の実現によってトップ・クォークの大量生成が可能となる。そこで今年度の研究においては,ILCのオプション実験として計画されている光子-光子衝突実験を想定し,トップ・クォークの生成・崩壊過程から標準模型を超える新しい物理現象として観測される可能性のある相互作用の結合定数を最適化観測法(Optimal Observable Method)を用いて解析した。また,新しい物理現象は,標準模型ラグランジアンがSU(3)×SU(2)×U(1)ゲージ群のもとで対称な高次有効演算子による量子補正結果を介して生じると仮定した有効ラグランジアン構築し,解析には,その有効ラグランジアンを使用した。 結果として,衝突する2つの光子を円偏向させることによって,300GeV程度の重さを持つヒッグス粒子が引き起こす標準模型を超えた相互作用を精度良く測定できることを指摘した。一方,標準模型を拡張することによって生じるトップ・クォークと光子のCP非保存結合定数を今回注目した過程だけでは精度良く決めることが難しいことも分かった。 さらに,過去の解析で行ったILCで行われる電子-陽電子衝突実験を想定した解析と,今回行った光子-光子衝突実験を想定した解析の結果を比較考察し,トップ・クォークの非標準的な崩壊過程を測定するには,電子-陽電子衝突実験の方が適しているが,ヒッグス粒子(特に300GeV程度の重さを持つヒッグス粒子)の性質を精密測定する場合には,光子-光子衝突実験の方が適していることも併せて指摘した。
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