平成18年度は、昨年度に引き続き、2体系とみなせる不安定な入射核が標的核と衝突するという3体系を想定し、吸収境界条件を利用する方法(ABC法)に異なる2つのヤコビ座標を導入して3体系の反応過程を記述する理論、およびその関連した数値計算コードの開発に取り組んだ。現在、予備計算において2つの座標を取り込んだことによる波動関数の非直交性に起因した計算結果の収束が非常に遅いという問題の解決に取り組んでいる。 一方、先に述べた空間固定座標を用いるABC法とは別に、物体固定座標を導入することによって、近似を用いずに連続状態の影響を直接取り込めるという特徴を保持したままで、核子移行反応と核融合断面積を計算する方法にも取り組んだ。この方法では、1つのヤコビ座標だけを用いるかわりに、入射核が分解する連続状態に関して非常に高い角運動量まで考慮することにより、核子が標的核の周辺に局在するという状態を記述できるのが特徴である。 この方法を用いて2体系とみなせる1中性子ハロー核の低エネルギー核融合反応について検討した。その結果、ハロー中性子はクーロン分解反応において「観測者」的な役割を果たすため、芯核と標的核の融合反応においては実質的な入射エネルギーの減少を招き、その結果、核融合反応断面積が幾分抑制されてしまうことが分かった。現在、核子移行反応や陽子ハローを持つ不安定核でどうなるのか研究中である。
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