本年度は、暗黒エネルギーの理論的なモデルの構築とその観測的な制限、超弦理論に基づくインフレーションについての研究を主に行った。特に、暗黒エネルギーに満たされた宇宙での未来の特異点についての分類を行った論文は、2005年度において物理学の分野で書かれた論文のうち、世界で2番目に引用数が50を超えたものである。さらに、そのような宇宙における量子補正や高次の曲率項の効果についての詳細な解析を行い、どのような場合にそのような特異点が回避されるかを明らかにした。特に、超弦理論に基づく高次の補正項を入れたときの暗黒エネルギーのダイナミクスを、いくつかのモデルに対して行い、モデルによっては未来のBig-Rip特異点が回避されることを示した。 さらに、スカラー場が2つ以上存在する系において、どのような場合に加速度膨張を助けるメカニズムが働くかを明らかにした。これにより、1つのスカラー場では加速度膨張できなくても、2つ以上のスカラー場により有効な暗黒エネルギーのモデルが構築されることが示された。また暗黒エネルギーと暗黒物質が結合している系においては、宇宙は加速度膨張をできることが知られている。我々は、このような系における固定点の存在とその安定性についての詳細な解析を行い、そのような場合の固定点の一般的な性質について明らかにした。 また、D-ブレーンを用いた宇宙初期のインフレーションモデルの構築とそれによる密度ゆらぎの計算、さらに再加熱の機構についての解析の研究を行った。これにより、宇宙背景輻射の観測と矛盾しないモデルの構築が可能であることが示された。
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